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  • 執筆者の写真金子充

子どもたちのサードプレイスをつくる:魚籃寺プロジェクト2023

更新日:3月29日


2023年度 社会福祉学科2年「福祉開発フィールドワーク」


文:金子ゼミ K・T・N・T・H



 高層マンションが立ち並ぶ白金にひっそり佇む浄土宗のお寺「魚籃寺(ぎょらんじ)」。ここで地域の活動家・中島さんが主催する任意団体「子どもの『力』プロジェクト」による「魚籃寺プロジェクト」と名付けられた企画に金子ゼミで関わっています。

 「個人化」と呼ばれるように、子どもたちの居場所が「学校か家か」の二択になってしまいつつある現代社会で、私たちのゼミは子どもたちに「サードプレイス(第3の居場所)」をつくる取り組みを進めました

 まずは、魚籃寺プロジェクトの背景、その次に活動の意義と活動の紹介、最後に子どもとの関わりを通した私たち学生の学びについて説明します。


魚籃寺プロジェクトという企画

 魚籃寺プロジェクトは、コロナ以前に中島さんが構想された「子どもによる地域の食支援活動『子どもキッチン』」を出発点としています。多くの子ども食堂が、大人たちが作った食事を子どもたちに提供する形態になっているなかで、そうではなく子どもたち自身による「キッチン」を始めたいという思いがきっかけだったそうです。

 子どもたちには大人が想像しえないような力があり、その力を活かせる場を作りたい、その力を地域に還元したい等の思いから、中島さんは任意団体「子どもの『力』プロジェクト」を立ち上げました。子どもカフェ、子ども屋台など、これまでもいくつかの実践を経験されてきた中で、「子どもたちが自分たちで作って食べる食堂=子どもキッチン」を母子世帯または生活困窮世帯を中心とした子育て家庭への支援の一環として行いたいと考えたそうです。

 いずれは子どもキッチンに地域の高齢者やひとり暮らしの若者など食支援を望む人々が集まって、子どもたちが作る食事とおしゃべりで笑顔になってもらえるとよいな~と、遠い夢を描いていらっしゃるそうです。


魚藍寺プロジェクトの意義

■世代を超えた交流

 このプロジェクトには、主に地域の未就学児や小学生(低学年~高学年)が参加し、明治学院大学の金子ゼミの学生や大人と一緒に遊んだり、おしゃべりをしたりして交流を深めます。子どもたちにとって、私たち大学生などと交流をして同じ空間で作業する機会は中々ないと思います。そこでこのプロジェクトを通じて普段は関わることの少ない世代間交流をして子どもたちの創造力や表現力の向上を図ります。

■フードドライブ

 プロジェクトでは、港区社会福祉協議会等を通してフードドライブとして集められた食料品を提供してもらい、イベントに参加してくれた子どもたちに提供しています。子どもたちに食料品を提供することで食品ロスを減らすとともに地域の子どもの孤食解消や保護者支援に繋がります。

■居場所の構築

 プロジェクトは主に上の2つの目的をもって活動していますが、このような活動をしていくことで子どもたちや様々な家庭が地域で孤立することなく、多くの人々との繋がりをもつことができます。つまり、このプロジェクトには子どもたちの社会教育、見知らぬ地域の人々とのつながり(コミュニティ)づくり等の意図も込められています



魚籃寺プロジェクトの活動概要

■会場となる魚籃寺について

 魚籃寺プロジェクトは、東京都港区三田(白金高輪駅徒歩5分)にある浄土宗のお寺「魚籃寺」を借りてイベントを定期的に行っています。

 コロナ禍を経て、2022年の秋から活動を本格的にスタートさせました。リーダーとなる中島さんを中心とする地域メンバーと、明治学院大学の金子ゼミ(2年生から4年生まで)が繋がり、定期イベントを開催する計画を立てました。

 2022年12月に最初のイベントとして、子どもたちの「寺deクリスマス会」を開くことが決まり、さらに2023年2月には「寺deひな祭り」が開催されました。


2023年度の企画

●2023年6月「寺deキッチン~いろいろパンケーキ」:ホットプレートでパンケーキを作って食べました。

●2023年9月「寺deティータイム」:英語ネイティブの方をお呼びして絵本を読んで、イングリッシュ・ティー・タイムをしました。

●2023年11月「寺de ART」:公園に落ち葉や松ぼっくりを拾いに行き、葉っぱや木の実のアート作品を作りました。

●2023年12月「寺deクリスマス(第2弾)」:お寺にやってきたサンタクロースを囲んで盛り上がりました。

●2024年2月に「寺de節分&恵方巻き」:恵方巻きを作ってみんなで食べました。



■イベント詳細の紹介(1)

 2023年6月24日(土)「寺deキッチン~いろいろパンケーキ

■準備

 プロジェクト担当(地域メンバー)の方々が、チラシを港区社協、生活支援センター、魚籃寺近くの町会掲示板、三田中別室登校生徒へ配布。

当日の流れ:主催者側は9時半に集合 →出欠確認後、軽くミーティング →準備(パンケーキ) →10時子どもたち集合。

■子どもたちに渡すメッセージカード作成~感じたもの

 参加してくれた子どもたちとの「出会いの縁」を大切に、学生から子どもたちに「何かの形でメッセージを伝えたい」想いからメッセージカードを事前に作成しました。

 また、想いを文字にして、形で伝えることで「楽しく過ごした時間を思い出してもらえたらな」「また参加してみたい」など子どもたちの心で感じ取る「何かを」大事にできたらと思いました。

 子どもたちと交流する場は、初めて顔見知りして終わりではなく、学生・子どもたちが交流を通して感じとる想いを大事にしたいと感じました。自分たちの足で直接子どもたちと触れ合える場に行くことで、直接見たもの全てが「確度の高い情報」になってくると考えます。


■活動の様子:子どもたちが料理に触れることの大切さを感じた瞬間

 パンケーキを焼くのは簡単で、おままごとの延長のような作業で簡単につくれる工程で楽むことができました。ボールに卵と牛乳を入れ、よく混ぜ、ホットプレートにのせて、泡がでてきたらひっくり返すという作業です。「自分でできた!」と料理をつくる楽しさを感じ、達成感を得ている様子がありました。

 イベントの最後には、学生からメッセージカードを参加してくれた子どもたちに渡しました。子どもたちと触れ合える魚籃寺プロジェクトは、子どもと学生が挨拶をかわし、交流して終わるのではなく。子どもとの出会いの「縁」を大事に。そして次につなげる「輪」を結ぶことがとても大事である。その1つとして、言葉の形にしたメッセージカードを子どもたちに渡しました。子どもたちが「ありがとう!」と笑顔で受け取ってくれたのが印象的です。ごくふつうの反応に見えて「一緒に楽しく過ごせた時間が楽しかった」という想いが伝わってきました。

■イベント参加して気づいた点

・イベントの導入のところで子どもたちの緊張を解く工夫ができればよかった。

・ゆっくり食べる場所があったほうがよかった。

・料理に関して、子どものやる気を伸ばす声かけや工夫がもっと必要だった。

・子どもたちを含めて「終わりの会」をやったほうがいい。そこで子どもたちからのフィードバックがあれば次につながり、課題も確認できる。

■感想・考察

 大学の授業では、座学として多様な子どもたちの「課題」=虐待・貧困・育児問題・難病児などについて学習することがありました。本から学べることは多くありますが、「人と人とが向き合う場面」に参加することで、様々な人間と直接触れ合うことで見える学び・気づきが多くあることがわかりました。また、貧困や病気といった課題を抱える子どもたちだったとしても、明るく素直で笑顔あふれる子どもたちで、人間の多様な側面を見ることができました。

そして、自分の目でみて、考え、どうアクションをしたらいいか考える力がつきました。一方通行型の学びで終わらせず、体験を通して幹から枝分かれのような幅広い学びへと展開することが大事であると思いました。




■イベント詳細の紹介(2)

 2023年11月18日(土) 「寺deアート~落ち葉やどんぐりを拾って創作あそび

■準備

 プロジェクト担当(地域メンバー)の方々が、チラシを三田豊岡町会の掲示板3箇所、松坂町会の掲示板などに掲示。

当日の流れ:簡単なアイスブレイク→落ち葉拾い→作品作り→ココアを入れて飲む。

■活動の様子

 秋らしさをイメージして、落ち葉を用いた作品作りに挑戦しました。

 初めは、クリスマスに向けた準備というコンセプトで話が進んでいましたが、11月開催ということで、「落ち葉を使った作品を作る」というコンセプトにしました。

 子どもたちにいきなり「白紙と落ち葉で何かを作ってください」と言っても無理があると予想し、大学生側が事前に何個か参考になるような作品を用意しました。実際、この参考作品を見て「何をしていいか分からない」と言った子はいませんでした。

 最初のアイスブレイクでは、以前に来てくださったお子さんのお父様から教えて頂いたゲームをしました。3つくらいテーマを決め、例えば「お菓子」と言われたら「チョコ」と答え、真ん中にいる鬼から投げられたぬいぐるみを返すというゲームです。長い時間答えが浮かばず黙ってしまった場合は鬼になってしまいます。 このアイスブレイクで子どもたちと軽く顔合わせもでき、心を少し開いてくれました。

 アイスブレイクの後に向かった落ち葉拾いでは、体も動かせて、子どもたちが自分の作品で使いたい葉や実を集めることが出来ました。二か所の公園へ行き、様々な色・種類の落ち葉やドングリ・松ぼっくりを集めました。

 人見知りをするため今回参加して下さったお子さんもこの拾ったり一緒に探すというフェーズがあってか、作品作りをする頃にはすっかり心を開いて沢山おしゃべりをしてくれました。




■子どもとの関わりを通した学生の学び


1)子どもの安全をどう守る? リスクマネジメントについて

 直近の12/16の活動では、工作で「グルーガン」を使用したことで、複数の子どもが軽い火傷を負ってしまうというトラブルがありました。グルーガンの使用に関しては、以下の対策を取った上で、細心の注意を払いつつ使用を継続するべきか、それとも使用を辞めるべきか議論を進めている段階です。現段階で考えられる対策として、2つ考えられます。

1つ目は、大人側のみがグルーガンを使用出来るものと制限し、グルーガンで子どもたちが指定した部分を接着するという対策です。専用ブースをつくれば、グルーガンの管理も大人側ができます。ただ、効率が悪くなり、時間が押す可能性があるという課題があります。  2つ目は、グルーガンを使用した後に置いてある状態で熱い先端に触れて火傷をするというケースが見られた為、グルーガンを使用した後に、しまうケースを取りつけるという対策です。耐熱の容器を用意し、使った後は必ずしまうルールをつくれば、グルーガンを使用後の火傷のリスクは抑えられると思います。

 今後は、このような対策を取った上で、細心の注意を払いつつ対応していくべきだと考えています。子ども達に多くを経験してもらうということを優先すべきか、それとも怪我をしないようにすることを優先すべきかが、今後の魚籃寺プロジェクトにおいて大きな課題になると考えます。

2)障がい児(静かな子・多動な子)・元気な男の子との関わりについて

 障がいのある児童の参加があった場合については、予めイベントを行う前に大人と学生で様々な児童が来る場合を予測し、児童1人に学生1人を対応する(参加の多い場合は児童2人に学生1人)などの安全を確保するための環境の整えが必要であると考えます。

事前に、初めて参加する子の特徴は、こちらでは分からないという難点があります。「どういう子がくるか分からない」中でも、児童が自ら安全に行動できるよう学生の人数確保は大事であると考えます。それは、学生の参加を固定に、行かなくてはいけない気持ちを抱かせてしまう問題点も挙げられます。

 魚籃寺プロジェクトでは、子ども・学生・大人が「今日のイベントに参加してよかったな」と思えることが大事であると考えます。誰もが参加できるハードルを下げ、「次も参加したい」と思える環境を皆の手でつくりあげれたら一時的なものではななく、持続的に繋げられるボランティア活動へと展開していくことができると思いました。

元気な(多動な)男の子が加わった時の対応についてです。実際、走り回る、じっとしていられない男子児童も見受けられたため、遊び内容の見直しや男子児童を見るための人員確保などが課題だと考えます。加えて、障がい児の児童が参加した時どういう対応をしていけばいいのかという課題も挙げられました。

 男子児童の対応についての解決策として挙げられるのは、工作や料理などといった内容だけでなく外遊びや新たなゲームの考案など男女共に楽しめる内容を考えることです。また男子児童を見届けられる環境を整えるために私たち学生の中でも人員をもっと増やすように務めることが大事だと考えます。

3)学生は年間を通して入れ替わりがある。コアメンバーがいた方がよいか

 魚籃寺に参加する大学生のメンバーが毎回変わってしまうという点です。せっかく1日通して子ども達と交流をして親しくなったとしても、次のイベント開催でメンバーが変わってしまったら、子ども達は毎回初対面の大学生とコミュニケーションをとることとなり大変な思いをさせてしまいます。

 その為、大学生側も金子ゼミでは魚籃寺プロジェクトに携われることが出来るようになっているので、今後は2年生から4年生までの3年間長く参加するコアメンバーを作っていくこと必要だと考えました。

 そして参加出来ない場合も金子先生とコアメンバーを中心に学年の垣根を越えて、事前にどのような子どもがいるのかなど情報を共有して、当日子ども達を不安な気持ちにさせないように努めることが大切だと考えました。

4)子どもだけではなく、地域の多様な方々が交流できる場を

 魚籃寺プロジェクトでは、地域の高齢者や独身者など食支援を望む人々が集まって、子ども達が作る食事とおしゃべりができる場もつくれたら幅広い交流と新たな気づきが得られると考えます。イベントに加わる学生・大人だけの学びだけではなく、参加者にとっても交流を通じて「楽しかった」「もっとこういうのがしてみたい」と外から声を拾うのもイベントの質を高める上で大事であると思います。

 魚籃寺プロジェクトで掲げる意義の1つに、居場所の構築があります。イベントをつくりあげる側の意見では解決に「見えない課題」もあると思います。そこで、多様な人との繋がりの入口をつくり、誰もが安心して充実感を得られるコミュニティ場を私たちだけではなく、皆の手で作り出せたらと考えます。

 子どもキッチンでは、子どもの手で「つくる楽しさ」を見出し、子ども主体に多様な方と協力しながら時間を費やすことができたら、最初では予測できなかった良い作品が仕上がると思います。


■Special Thanks

 企業の社会貢献活動の一環として、オハヨー乳業株式会社様より、魚籃寺プロジェクトに対して毎回たくさんの「生プリン」や「ヨーグルト」の差し入れをいただいております。ありがとうございます。



                文: 2年 金子ゼミ K・T・N・T・H


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