2022年度 明治学院大学社会福祉学科2年「福祉開発フィールドワーク」金子ゼミ
2022年度の福祉開発フィールドワーク・金子ゼミでは、貧困・孤立をテーマとし、地域・コミュニティにかかわる複数のフィールドワーク企画を実施しました。
事前学習として貧困・孤立のさまざまな形を見つけ出したうえで、自分たちは地域に対して何ができるか、そもそも他者とのつながりやコミュニティ(共同体)は必要なのかといった議論をおこない、フィールドワークに臨みました。
貧困・孤立のリアリティを学ぶという目的でありながらも、それらを経験する当事者に直接関わることや、そのような課題を抱える地域を訪問することには十分な配慮が必要だと考えています。当事者・地域に対する偏見やスティグマについて事前学習で理解を深めたうえでフィールドワークをおこなうよう留意しました。
①大阪 釜ヶ崎(あいりん地区)フィールドワーク
訪問日:2022年9月2日13:00~17:00 (参加者13人)
貧困は特定の地域に現れるものではないという理解を前提に、それでも生活に困窮する方々が集住する地域にまずはアプローチすることからはじめました。
大阪最大の「ドヤ街」であり、釜ヶ崎(西成あいりん地区)と呼ばれてきた街です。支援団体を運営するソーシャルワーカーに同行してもらい、説明を受けながらこの地域を見学しました。近年の釜ヶ崎は再開発(クリアランス)が進んでいますが、炊き出しや交流のスペースとなっている「三角公園」が街の中心に存在し、付近には支援団体も数多くあり、今でも「支えあいのコミュニティ」がつくられている様子を見ることができました。
②NPO法人なごみ(西宮市) 訪問、インタビュー、他大学との交流会
訪問日:2022年9月3日 9:30~13:00(参加者13人)
西宮市の武庫川にあるNPO法人なごみを訪問し、共生型地域交流拠点事業である「まちカフェなごみ」等を見学させていただきました。代表者である田村さんの「地域の特性に応じた魅力あるまちづくりをおこないたい」という並々ならぬ思いが伝わるあたたかい活動拠点でした。
また、なごみが行っている生活支援事業である「まちのよろず屋」、不登校支援事業である「toitoi」等も見学させていただきました。
今回の訪問にあわせて、関西学院大学・武庫川女子大学の学生とグループワーク・対話をおこなう時間も設けてもらうことができました。
③横浜寿町および「寿福祉プラザ」見学・説明、フィールドワーク
訪問日:2022年10月19日 10:00~12:30(参加者10人)
横浜キャンパスのある地元であり、就職先として公務員になる卒業生がとても多い横浜市。中区にある寿町は港湾労働者の宿泊施設として発展し、簡易宿所街(ドヤ街)となりましたが、現在では市民でもその存在を知らないことが増えているようです。
そのような現在であってもこの地域に住む方々の人権を尊重し、周辺地域からの偏見をなくすことに注意を払っていらっしゃる横浜市寿福祉プラザのソーシャルワーカーの説明が印象的でした。
④NPO法人ほっとポット 施設見学、利用者・支援者インタビュー
訪問日:2022年9月21日 9:30~13:30(参加者10人)
NPO法人ほっとポット(さいたま市岩槻区)は、生活に困窮している方々への相談支援のほか、生活保護受給者(元ホームレス者)のための宿泊所(無料低額宿泊所)、元受刑者のための緊急一時シェルター、精神障害・知的障害のある方のグループホームを運営しているNPOです。
職員はすべて社会福祉士・精神保健福祉士で、社会福祉士の倫理綱領と行動規範にのっとって専門的な支援を展開することに力点を置いているとのことでした。生活保護受給者に対する偏見と差別、そして生活保護に関わる支援団体や宿泊所事業者に対する一般社会からの偏見も強いため、「専門職による支援」を強調していることが伝わってきました。
グループホームでは入居する方々にインタビューする機会もいただき、複数の方々の生活保護に至るまでのライフストーリーをうかがうことができ、多くの学びを得ることができました。
⑤「フードパントリー」への参加
参加日:2022年6月19日・8月21日(参加者・のべ7人)
県営住宅である諏訪山下団地(さいたま市)で2ヶ月に一度おこなわれる「フードパントリー」の活動に2回参加しました。フードロスをなくす活動をしているセカンドハーベストやイオン等から寄贈された食料品を、公営団地の居住者(高齢者、母子世帯が多い)に配給し、あわせてソーシャルワーカーによる生活相談(の見学)や交流をおこないました。
⑥上野公園 ホームレス夜回り・インタビュー
訪問日:2022年12月17日 17:30~23:00(参加者3人)
上野公園で路上生活をしている方々を訪問し、声かけをしつつ、インタビューをおこないました。3人の方からホームレスに至ったいきさつ、経歴、現在の生活の様子、必要としているもの等についてうかがうことができました。また、支援団体がおこなう炊き出しに参加することができました。
これ以外にも複数のプロジェクトを実施しました。別記事で報告します。
2022年度のゼミは大人数のゼミでしたが、多くの企画を実施することで充実したフィールドワークを数多く展開することができました。体験した気づきを今後の学びや卒論につなげていけたらと思っています。(文責・金子充)
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